今年、自分が送った年賀状は全部で27枚。毎年送っている人や、旅中にお世話になった人へ、短い挨拶をしたためて去年の11月にポストに投函した。
その返信の年賀状が元旦以降、毎日2、3通ずつ寮に届く。仕事から帰り、部屋でそれを見るのが楽しみだ。
今日届いた年賀状の中にNさんというおばあさんからの年賀状があった。
Nさんとは、青森県むつ市で出会った。梅雨に入る前の時期であったと思う。大間から脇野沢に抜ける峠道を歩き、海岸線でブユに刺されまくれ、ヘーコラしながらたどり着いたむつ市。青森市を目指して、ひたすら歩いている途中で立ち寄った商店にNさんはいた。
店の入り口にある冷蔵庫の中で汗をかいている缶ビールが実にうまそうで、いやいや、でも昼から飲んだらまた歩けなくなる、なんて我慢しつつも、やっぱり堪えきれずに缶ビールを買って、店内でそれを飲みながら、しばし休憩させてもらった。この時、Nさんが自分の話し相手をしてくれ、たわいもない世間話をしたのだった。
Nさんは、
「ところてん食べる?」
と、自分に店の商品のところてんを持ってきてくれた。自分がありがたくそれを頂いていると、今度は納豆やら豆腐を持ってきて、自分に持たせようとする。
「いやいや、大丈夫ですよ。ありがとうございます」
そんなやりとりをして、自分はまた歩き出す準備をしていると、
「じゃあ、これ持っていき」
とポリコーンというお菓子を持ってきて、自分に持たせてくれた。
自分は、持っていたカメラを三脚にセットして、Nさんと2ショットの写真を撮った。
「後で、この写真を送りますから、住所教えてください」
と自分が言うと、Nさんは、いいよ、いいよ、と言いながら、店の奥に何やら取りに行って、戻ってくるなり一通の封筒を自分に差し出して言った。
「これがうちの住所なのよ」
なんともかわいいおばあさんであった。
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