工場の仕事の方が経費削減だかで、皆の残業がカットされた。というのは、昼勤と夜勤のそれぞれ最終日をノー残業デーにしよう、みたいなことになったのだ。
そして今日、昼勤の最終日、いつもより2時間早く仕事が上がり、バイトまで少し時間があるのでKさんと飯を食べに行くことにした。T君もその場にいたが、彼はパチンコに行くというので、自分はKさんと二人で居酒屋に。お好み焼き屋に行きたかったのだが、どういうわけか、居酒屋になった。
バイトに支障が出ない程度に飲みつ食らいつ、Kさんと職場の話や、旅の話をしていると、これまた、どういうわけか、話が飛んで、これから歓楽街に繰り出そうという話になった。
まあ、男同士だとよくある展開かもしれない。
しかし、自分にはバイトがある。
「いやぁ、行きたいっすね」
「行こうや」
「でも、バイトがありますよ」
「休んじゃえや」
「そら出来んっすよ」
「いいじゃん、高沢くん、いつもバイト行ってんだから、たまにゃ休めよ」
「うーん」
「腹痛いです、って言やーいいじゃん」
「えー?いやぁ・・」
「考え中、考え中。決まった?」
「うーん」
「高沢くん、高沢くん行くなら店に電話しとくわ」
「どこ行くんすか?」
「ストリップよ。ええで~、ロシア、フィリピン、中国とあってな。まあ、たいがいロシアよ」
「ええんすか」
「ええよ~、この店のお姉ちゃんとは月とスッポンよ」
と、居酒屋の店員を指して言う。
その会話に至るまで、二人で店員の女の子の品定めみたいなことをしていたのである。
「どうすんのよ、高沢くん」
「うーん」
「おっぱいなんか、すごいで!」
「すごいんすか」
「すごいよ~、月ばっかじゃ。・・あれはスッポンよ」
と、居酒屋の店員の女の子を指して言う。
「いやー、あの子ええと思うんすけどねー」
「くぁー、高沢くん、ありゃスッポンやで」
(あれがスッポンかあ、月はどんなだろうな)
「行きたいっすね」
「行こうや」
「でも、今日はやめときます」
それで結局、自分はKさんと別れ、バイトに向かったのだけど、いけんよなぁ、頭の中に白くて綺麗な月が浮かんでは消えず、空が月だらけになってしまった。今宵、手に届かなかった悔しさから、柔らかいそれに飢えている。
男って、きっと誰にでもそういう時がある。情けねぇよなぁ、っていつも思うんだけど、チンポコと目玉がある限り、多分、永久不滅に見たくなる、手を伸ばしたくなる、白くて柔らかくて丸い月。
本能だよなぁ。
ダッサイようで、それが意外とロマンなのかもしれない。
なんて。
溢れて萎んで。
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