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341日目 さらばマツダ(6)

3月11日。昼勤ラスト。
あまり、今日でラストという気がしない。いつも通り働いて、いつも通り皆と話をした。
休憩中に、AさんとG君が自分に話を振ってきた。
「高沢、今日は空いてないんか」
「いや、今日もバイトです」
「・・みんなが、送別会でお前におごってもらうの楽しみにしとる」
Aさんがそう言う。クビにした人間におごろうとしてもらっているのか、という気になったが、これはAさんの不器用な優しさだろう。自分の送別会がおじゃんになったことを気にかけてくれているようだった。
G君が
「送別会、やりましょうよ」
と言うので、自分は言葉を濁したのだが、とりあえず寮にいつまでいられるかが分からないのを理由に断った。
「今日はバイトは空かないのか?」
と聞かれたが、
「すいません」
と返事した。
「まあ・・しょうがないわいの」
そう言い残して、休憩室を出ていくAさんが、自分には寂しげに映った。
Aさんは、今日、やたらに自分の持ち場にやってきて、自分に話しかけてきた。自分は引き継ぎの為にやって来た後釜の人に仕事を教える作業をしていたのだが、その教え方を一々、指導しに来るのである。嫌がらせかと思ったが、今これを書いていて、そう思わない。あれはAさんの優しさではなかったろうかと思えてくる。
Aさんは仕事に対する信念のはっきりした人で、例えばそれを部下によって、厳しくしたり緩くしたりしない人である。ところが最近は、自分の持ち場にはあまり顔を出さない、というか、話しかけてこなかった。恐らく、自分に対して許容範囲の限界で顔を見たくなかったのだろうが、最後にこうして、ああ教えてくれ、こう教えてくれ、と自分に話しかけてきたのは、仕事だから、というより、個人的な自分への最後の思いがあったのだろう。ありがたく思う。
最後の休憩時間に皆の分の缶コーヒーを買って、持っていった菓子詰めを開けて食べた。AさんとG君は機械がトラブったようで、休憩に来なかった。職場のトップである職長に、お世話になりました、と缶コーヒーを持っていくと、今回のことがいい経験になっただろう、と言われ、次第に旅の話になり、ちゃんと親のことを考えろ、お前も親になれば分かる、と諭された。
仕事終了。自分が使っていたロッカーを片付けて、ゴミをまとめ、鍵を返す。残業があるAさん、G君、Tくん、Kさんに挨拶をして回り、最後にG君に2万円を渡してきた。G君は自分の一番身近で仕事をしていた仲間で、クールな21歳、妻子持ちである。ちなみにAさんは、35歳、妻子持ち。Tくんは22歳、もうすぐ子供が生まれる。Kさんは38歳、妻と6人の子供がいる。って、何故、今頃メンバー紹介?いや、みんなとよく話したな。面白かった。
「送別会、俺行けんけど、Tくんに子供が生まれたら、皆で飲みに行ってや。G君にも、たくさん尻拭いをさせてしまって申し訳なかった。ありがとう」
「ええ?いやいや、そんなの慣れたもんですよ。高沢さん、もう旅に出るんですか?」
「いや、まだもうちょっと様子を見てからだね」
「Kさんが、まだしばらくは、荷物をまとめる期間とかあるだろうから寮にいられるんじゃないかって。だから、送別会これるんじゃないか、って話してたんですけど・・」
「・・いや、いい。俺はいいよ」
「・・とりあえず、福岡行くんですか?」
「そうだね。福岡から沖縄の方に回る」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
ちょうど、その時、そこにKさんがやって来たので、自分は、じゃあお疲れさん、と言って、その場を後にした。
いつもの通路を歩いていると、Tくんと目があったので、また話しこむ。
「ついに終わりだね」
「ああ、終わったわ。世話になったね」
「高沢くん、寂しいでしょ」
「ええ?そうだな、寂しいような・・。まだ分からんな」
「高沢くん、おらんくなったら寂しいで」
「そうかぁ?Tくん、頑張ってや」
「高沢くんも頑張れよ」
「頑張るよ」
「・・・」
「・・いやいや!こういうの苦手だから、もう行くわっ!」
「おぅ、元気で!」
「ありがとう!」
手を振って別れ、バス停に向かう。これから、派遣会社の詰所に寄って、色々と手続きしなければならないのだ。バスの中、いつも見ていたジオラマ山ともお別れである。
詰所にて、全ての作業が終了し、工場の入門証と作業着を返した。寮の方も、なんとか月末まで使わせてもらえることになった。担当者が、今後の日程はどうされるんですか、仕事が決まっていなければ引き続きうちの会社でどこでも・・、と言うので、自分は自分の旅のこと、その資金を稼ぐために内緒でバイトをしていたこと、それについて迷惑かけたこと、全て話して謝った。
担当者が、
「えー!すごいなぁ。まあ、バイトのことは聞かなかったことで・・。お金、いくら貯まりました?」
と言うので、
「150万貯まりました。ありがとうございました。」
と答えた。
150万。自分は広島で150万円を貯めた。このお金を貯めることが出来たのは、まず第一にこのマツダのN職場のおかげである。最後がこんな形だったのは本当にふがいない。しかし、ありがとう。本当にありがとう。
ハンコを忘れてしまったので、部屋まで担当者が一緒にハンコを取りに行くと言い、その車に便乗させてもらうことになった。
車で、マツダのいつもの門を出て、寮に向かう。車中では最近人気のパチンコ「エウ゛ァンゲリオン」で使われる魂のルフランという曲が流れており、担当者が
「誰が入れたんですかね」
なんて話していた。
マツダが遠ざかっていく。もう、あの門をくぐることはないだろう。
「この旅で、もし有名になったら、僕の名前出して下さいよ」
「いやいや、ならんですよ」
そんな話をしているうちに、寮に到着。ハンコを押して、担当者は帰っていった。
一人、部屋のベッドに座りこむ。時計を見て、あーまだみんな働いてるなーと思う。自分はこれからバイトに向かうのだ。残り3月一杯は無理なく稼ぐ。って、自分、懲りてんのか、懲りてないのか、なんなのか。
とにもかくにも、さらばマツダ、ありがとう。部屋の電気を消して、自分はファミマに向かって歩き出した。
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プロフィール

高沢 里詞

Author:高沢 里詞
埼玉県行田市出身
S57・12・7生
26歳♂
B型
パンクロッカー・詩人
行田秘湯の会会長
S・O’S(スーパーアウトドアーズ)部長
行田不毛の会会長
行田死語の会会長

注※どの会も新規会員募集は行っておりませんが、もしも会員になりたい方がいましたら密談でどうぞ。

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